2022.03.22

多様性と都市交通のルール作り ―近年における電動モビリティの台頭に寄せて

Diversity and Rules for Urban Transportation in a New Era of Mobility ―Considering Expansion of Introduction of New Electric Mobilities in Recent Years

立飛総合研究所(TRI) 理事 事務局長兼統括研究主幹

市川 嘉一Kaichi ICHIKAWA

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■規制緩和に向け公道での走行実証実験を相次ぎ実施

それが2020年から民間事業者の要請を受け、時限的な規制緩和の試みが始まっている。認可を受けた事業者のみの特例的な措置として、産業競争力強化法に基づく新事業特例制度が電動キックボードに適用され、公道での走行実証実験が行われている。

まずは第1弾として2020年10月から2021年3月までの半年間、最高時速20kmを条件に走行できる場所として、車道に加え自転車レーン(道路交通法上の正式名称は「普通自転車専用通行帯」)が認められた。そして、2021年4月から同10月までの第2弾(その後、2022年7月まで期間延長)では最高時速を15kmまでに抑えれば、原付き自転車ではなく、「小型特殊自動車」の扱いでヘルメット着用なしでも乗車が可能になった。走行空間も車道、自転車レーンのほか自転車道、一方通行だが自転車は双方向通行が可能な車道も対象に加わった。

1回目に続き2回目の実証実験にも参加した事業者はLUUP(ループ、東京・渋谷)やEXx(エックス、東京・港)、mobby ride(モビー・ライド、福岡市)、はしごメーカーの長谷川工業(大阪市)の4社で、ほとんどがスタートアップ企業。それぞれ実施エリアは異なる。ループは渋谷区や港区など東京都心エリアと大阪市。エックスは東京・渋谷・世田谷の両区のほか、千葉県柏市、神奈川県藤沢市、兵庫県豊岡市。モビー・ライドは地元福岡市、長谷川工業は地元大阪市のほか、千葉市の一部を対象エリアにした。

実証実験期間中の2021年9月中旬の平日午後、私もこのうちループの電動キックボードを東京・青山で試乗してみた。

LUUP(ループ)の電動キックボードに試乗した筆者。2021年9月16日、東京・青山で

まずは、自分のスマホからループの専用アプリをダウンロードする。その後、料金を支払うクレジットカードの情報を入力。アカウント設定画面から自らの自動車免許証の写真データを当該画面に貼り付けるなど利用者登録をした後、乗車に当たって、「特例の電動キックボードは自転車扱いとなるのか」など関連する道路交通法上の走行ルールに関する知識を問う確認テストを受講。出題された問題を全問正解してはじめて乗車できる。

その後、キックボードの置かれているポートが図示されたマップ画面から、使いたいポートを探すと、そのポートに機体があるかどうかを確認。該当する機体のあるポートに着いたら、スマホの「ロック解除」と印されたボタンを押してカメラを起動し、機体のハンドル中央部にあるQRコードから5ケタのID(機体番号21554)を読み取ると、カギが解かれ、行きたい目的地のポート(=返却する場所)を選択して手続きが終わる。機体の大きさは長さが140cm、幅80cm、高さは140cmとコンパクトだ。

利用料金は実証実験中の特別価格として初乗り10分までは110円。以後1分おきに16.5円が追加される。最高時速は15kmに制限されている。ヘルメットの着用が任意で、ポート内に置かれた機体にもヘルメットは備え付けられていない。

ループは港区はじめ東京都心エリアで運営しているが、多少土地勘のある東京メトロの青山一丁目駅近くにあるポート(港区)を乗車場所に選んだ、国道246号線(青山通り)と都道319号線(外苑東通り)が交わるところにある新青山ビル前(外苑東通り沿い)のポートだ。幸い、このポートには利用できる機体が1基だけあった。

ただ、実証実験中とはいえ、キックボードは車道もしくは自転車レーンしか走れない。国道246号線は車の通行量が多く危ない(後で走行できないことを知った)、外苑東通りも車の往来が比較的多く、いきなりキックボードを運転するには不安だ。たまたま、近くに車の通行が少ない一方通行の車道を見つけ、そこで試乗した。

ポートのある場所はビルの敷地内(1階の銀行店舗横)にある。そこから機体を押しながら、向かいの外苑東通りを横切る横断歩道を渡り、その一方通行の車道に向かった。

地面を蹴ってスピードを付け両足を置き、機体の中央部にあるアクセルをゆっくりと押すと電動で加速し始める。機体自体が縦に長い2輪車であり不安定な構造にあるため、最高時速15kmとはいえ、スピードが思った以上に速く感じられた。乗った当初は恐る恐る運転したが、しばらくすると機体やスピードに徐々に慣れてきた。

乗車時間は計31分、乗車距離は300mで、料金は456円だった。初乗り料金(110円)プラス21分の追加料金(356.5円=切り捨てで356円)だ。先の料金体系と照らし合わせても、請求された料金は料金表通りで間違いなかった。

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