2022.03.22
多様性と都市交通のルール作り ―近年における電動モビリティの台頭に寄せて
Diversity and Rules for Urban Transportation in a New Era of Mobility ―Considering Expansion of Introduction of New Electric Mobilities in Recent Years
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■最終報告、歩道通行は原則禁止だが速度制御で例外許可
この後、警察庁は2021年12月23日に最終報告書3)を公表した。中身は中間報告書よりも緩和色が強まった。電動キックボードを普通自転車相当の「小型低速車」とする際の最高速度を中間報告書の「15km以下」ではなく、「20km以下」と5km速い20kmまで認めたうえで、運転できる年齢は欧米で多い16歳以上にしているものの、運転免許は不要とした。ヘルメット着用は努力義務にした。
問題は通行できる場所である。車道のほか、自転車レーンや自転車道も走れるが、歩道(路側帯を含む)の通行は「原則として不適当」としたものの、小型低速車でも最高速度を6kmまでに速度制御できる車両ならば、「通行を認める余地はある」と例外を認める考えを示したのだ4)。
現行の道路交通法で自転車は車道通行が原則で、歩道通行は原則禁止とされていながらも、幼児や高齢者の自転車走行、さらに車道を走るのが危ない時や「自転車通行」の標識があるところでは例外として歩道を通行してもよいと定められている。自転車の歩道通行を例外的に認める際の基準を認めたわけだが、基準がややあいまいなためか、明らかに基準が当てはまらないその他多くの歩道にも自転車を乗り上げることが日常茶飯事の風景となってしまい、またそれを警察が黙認する状況が続いている。
今回の電動キックボードも通行場所においても自転車に準じた扱いという形で、「歩道通行者並みの速度制御」を条件に歩道通行を例外的に認めようとしている。従来、「原則禁止」と唱えながら、自転車の歩道での乗り上げを黙認してきた「無策」を棚上げしたいがために、電動キックボードの歩道通行の例外を認めようとしているようにもみえる。
この最終報告書を踏まえた道路交通法改正案が2022年3月4日に閣議決定され、同年の通常国会に提出された。特に問題がなければ、2022年上半期までに改正案を成立させ、最大2年間の周知期間を置いて、2024年夏までの施行を目指している。
懸念されるのは、どこまで安全性が担保されるかである。時速6キロ以下の電動キックボードについて仮に歩道走行を認めた場合もそうだが、時速20キロ以下のキックボード走行を免許、ヘルメットなしで認めた場合においてもだ。
実際、電動キックボードの事故はこのところ、急増している。警視庁の調べによると、電動キックボードの東京都内での事故件数は2021年1~11月に60件、20年は統計を取り始めた6月から12月までが3件で、20倍に増えた。このうち、21年6月に書類送検された20代前半の飲食店従業員の女性は家電量販店で電動キックボードを購入し、無免許で運転。赤信号を無視してタクシーと衝突し、タクシーの乗客にけがを負わす人身事故を起こした。
電動キックボードの場合、現行法では原動機付き自転車の扱いのため、車道走行が原則だが、交通量の多い大通りで車と並走するのはキックボードに乗る者にとっても、車を運転する者にとっても危険だ。実際、車との衝突事故も増えていることから、警察庁は先ごろ、悪質な交通違反について現場で交通反則切符(青切符)の交付を決めた。
「事故の大半はシェアリングではなく、量販店やネットなどで個人が購入したキックボード」(関係者)だ。量販店などで個人購入した電動キックボードは免許証だけでなく、サイドミラーやライトの搭載やナンバープレートの取得もしていないケースが多いという。
こうしたキックボードとの差別化を図るため、シェアリング事業者は自らのサービスの安全面に関し問題がないことを強調する。2021年10月30日に立川市を皮切りに日本でのサービスを開始した電動キックボード世界最大手のバードの日本側運営パートナー会社、BRJ(東京・渋谷)5)の宮内秀明社長は「とにかく安心・安全が第一」と話す。